【課題解決EXPO2026】衛星データを自治体業務の日常へ!デジオン登壇レポート

先日、2026年7月10日(金)に北九州メッセにて開催された「課題解決EXPO2026 西日本製造技術イノベーション2026」内の注目プログラム「宇宙ものづくり産業セミナー」に、弊社の社員2名が登壇いたしました!

近年、宇宙ビジネスや先進技術への注目が集まる中、デジオンがこれまで培ってきた技術がどのように社会課題を解決しているのか。
本記事では、最先端の「自治体DX」「衛星宇宙」ビジネスの取り組みについて、現場でのリアルな実証エピソードと詳細なレポートをお届けします。

登壇イベントの背景と概要

「課題解決EXPO2026」は、ものづくり企業のイノベーションを加速させる最新技術やソリューションが一堂に会する西日本最大級の展示会です。
その中で開催された「宇宙ものづくり産業セミナー」は、宇宙産業への参入促進や、宇宙技術を活用した地域課題解決を目的とした非常に熱量の高いセミナーとなりました。

セミナー名 宇宙ものづくり産業セミナー
日時 2026年7月10日(金) 13:30〜15:30
会場 北九州メッセ セミナー会場C
主催 / 共催 【主催】(公財)北九州観光コンベンション協会
【共催】北九州市、九州航空宇宙開発推進協議会

熊本大学 波多氏による基調解説

本セミナーの冒頭では、熊本大学 助教/株式会社空宙技研 代表取締役の波多 英寛氏がご登壇され、基本的な衛星データについての解説が行われました。

衛星データ利活用の最前線で、学術研究とビジネスの両輪を牽引される波多氏より、衛星画像の仕組みや取得できるデータの種類、そして現代の社会課題を解決するための衛星データのポテンシャルについて、信頼性の高い専門的な知見が共有されました。
第一線で活躍される波多先生からの力強いメッセージと基礎解説は、その後に続くデジオンの「技術の社会実装」をテーマとしたセッションの意義をより一層深める、素晴らしいオープニングとなりました。

波多氏による基調解説

第1部:衛星データとAIが切り拓く新たな可能性

第1部では、弊社の執行役員である末藤が登壇し、私たちが目指す「社会課題の解決」と、衛星データの社会実装に向けた技術的なアプローチについて解説しました。

末藤和香子の登壇

拡大する衛星データ市場と「現場で使えない」4つのギャップ

近年、衛星の打ち上げ数は急増しており、2025年には年間4,517機規模まで拡大しています。しかし、「データは増えているのに、現場ではまだ使い切れていない」というのが実情です。
末藤は、そのギャップを生んでいる4つの課題について言及しました。

  1. 高額な導入コスト: 衛星画像自体の価格が高く、実業務への導入ハードルが高い。
  2. 専門知識の壁: データの解析や読み取りに高度な専門知識が求められる。
  3. インフラの不足: 大容量データを安定して扱うためのシステム環境が現場にない。
  4. 解像度・観測タイミングの制約: 欲しい時に欲しい精度でデータが得られず、現場での判断が難しい。

生成AIによる「取れるデータ」から「使えるデータ」への変換

このギャップを埋める1つの手段として、衛星データ利活用を推進するためのコアとなるのが、デジオンが開発した独自生成AI技術「DiXiM Imaging AI」です。

  • SAR Vision(光学画像化): 天候や時間帯の影響を受けず観測できるSAR画像は、そのままでは専門家でないと読み取りづらいデータです。これを独自の生成AIモデルで光学画像に近い見え方に変換し、対象物の位置や形状を直感的に把握できるようにします。
  • Hyper Vision(超解像化): 比較的低コストで取得できる中解像度の画像(2.5m解像度)を、実務で判断できるレベル(62.5cm相当)へ高精細化する超解像化技術です。FIDやPSNRといった客観的な評価指標を用い、「なんとなく見やすい」ではなく「実務の判断に使える」精度を実現しています。

AI技術のしくみ

これらにより、建物の輪郭や農地の区画が鮮明に表示されるため、現地での調査時も手元の情報と実際の景色をすばやく照らし合わせることができ、スムーズな判断をサポートします。

さらに末藤は、こうした技術を社会に浸透させるための「デジオンの立ち位置」の重要性についても言及しました。
現在、衛星データ市場は大きく4つの階層で構成されています。

  1. データ提供者: 衛星を開発・運用し、観測データを提供するプレイヤー
  2. 画像解析事業者: 取得したデータの画像処理や高度な解析を行うプレイヤー
  3. ソリューション提供事業者: 解析された技術を、ユーザーの実業務に合わせて最適化するプレイヤー
  4. エンドユーザー: 自治体や現場の意思決定者

デジオンは、この中で第3階層にあたる「ソリューション提供事業者」として、専門的なデータを現場の判断に直結させる役割を担っています。
どれほど高性能な衛星データが存在しても、それが現場の業務フローで簡単に使える形になっていなければ、社会実装は進みません。
衛星データ利活用を拡大していくためには、この「専門知と現場をつなぐ第3階層の存在」が不可欠です。

「専門知」を「現場の判断」へ繋ぐ、第3階層

第2部:宇宙を自治体業務の日常へ 〜現場で試した3つの事例〜

現場の課題:「ドローンでは諦めた課題を、衛星なら…」

第2部では衛星宇宙事業戦略担当である渡辺が、「宇宙を自治体業務の日常へ」というテーマのもと、自治体の皆様と伴走しながら進めた3つのリアルな実証事例を紹介しました。

渡辺龍司の登壇

飯塚市の担当者へ初めて実証のご提案に伺った際、印象的な言葉をいただいたそうです。
「ドローンでは諦めた課題を、衛星なら解決できるかもしれない。」

自治体が毎年行う農地調査には、実は非常に過酷なアナログ作業が伴っていました。
渡辺自身も猛暑の中で現地調査に同行し、その過酷さを体感するとともに、飯塚市が抱えていた以下のような課題を改めて認識したといいます。

  • A0サイズの巨大な紙地図の印刷・更新作業
  • 現場での紙への手書き記録
  • 事務所に戻ってからの「紙→Excel→別システム」という三重入力

劇的な成果を生んだ農地調査支援サービス「イナリス」

これらの課題を解決するためにデジオンが開発したのが、農地情報調査支援サービス「イナリス」です。
このサービスは、弊社独自の生成AI技術「DiXiM Imaging AI」による超解像化技術をベースにしています。
実証では、あらかじめ衛星データを解析して「水稲が植えられている農地」など現地確認が必要な箇所をスクリーニング。現場ではタブレットを用いてクラウドにリアルタイム入力し、紙地図や帰庁後のExcelへの三重入力を完全に不要にしました。

福岡県飯塚市での実証成果

この仕組みを導入した結果、次のような導入効果が確認されました。

  • 作業時間の大幅削減: 調査業務全体の作業時間を従来比で約81%削減
  • 担当者の負担軽減: NASA-TLX(主観的作業負荷評価)スコアが大幅に改善(約52%軽減、スコアが33まで低下)。
  • 現地調査の省略: 衛星解析のみで判定できた農地が約6割(約57.6%)に達し、現地確認を大幅に省略。

実証結果

飯塚市の担当者様からは、

「体感でも楽になったと感じていましたが、後日数字を見て驚きました。心理的負担が半減したという定量データは対外的にも説得力があります。県内で標準化し基盤整備が進めば、防災など他分野への横展開も期待できます。」

と、評価をいただきました。

現場と伴走した「人間中心設計(HCD)」

この頂いた評価の裏には、IT企業としての枠を超えた泥臭い活動がありました。複数回のグループインタビューで業務フローを徹底的にヒアリングしたほか、実際の紙地図による炎天下の調査に何度も同行。プロトタイプを現場へ持ち込み、職員の皆様に実際に操作していただきながら改善を繰り返す「人間中心設計」のPDCAを回し続けたことが、この成果に直結しています。

飯塚市から広がる、広域・共同利用の輪

飯塚市での成功を起点とした、現在進行中の2つの大規模な実証についても発表されました。

① 福岡県主導による8自治体共同実証(共同調達モデル)

今年度は、福岡県、RESTEC社と連携し、福岡市、飯塚市、朝倉市、大川市、大木町、糸島市、宗像市など8自治体が参加する実証がスタートしています。
最大のポイントは、高価な衛星画像を県単位で取得し、複数自治体で「共同利用(共同調達)」することでコストを下げるモデルです。現在は農業分野ですが、将来的には同じ画像をインフラ、防災、森林管理などへ展開することを目指しています。

② 鹿児島県種子島:1万筆を超えるサトウキビ産業DX

もう一つは、鹿児島県種子島の基幹産業であるサトウキビの調査DXです。
島全体で約2,339ha、1万筆以上の農地があり、毎年100人〜150人もの調査員が動員され、調査員の高齢化や判定の複雑さが大きな課題となっていました。デジオンとアークエッジスペース社のそれぞれが持つ強みを活かし、「イナリス」をベースとした種子島向けのシステムを構築してサトウキビ産業のDXを進めています。将来的には衛星データを活用しながら、サトウキビ産業全体のインフラとなるようなシステムの実現を目指していきます。

最後に渡辺は、飯塚市での実証からスタートした衛星データ活用の取り組みが、着実に広がりを見せている現状を報告しました。その上で、「今後は県単位など広域な規模で衛星データを共同調達し、複数の自治体でシェアしながら、地域全体の行政DXを促進していきたい」と今後の目標を語り、講演を終えました。

大日光・エンジニアリング 柴田氏のご講演

デジオンの講演に続き、株式会社大日光・エンジニアリングの柴田克哉氏による「宇宙産業参入を目指した自社開発品の宇宙実証への挑戦」と題した講演も行われました。
栃木県を拠点とする電子機器メーカーの同社からは、独自の超小型人工衛星の打ち上げに挑む、プロジェクトの軌跡が語られました。
宇宙特有の過酷な条件下でのハードウェア設計における試行錯誤や、コスト削減の工夫など直面した幾多の障壁をいかに打破してきたか。製造業の視点から宇宙ビジネス参入のリアルなプロセスが共有され、ソフトウェアを主軸とする弊社にとっても、異なるレイヤーからの知見は非常に大きな刺激と学びを得る貴重な機会となりました。

柴田氏のよる登壇

「宇宙を自治体業務の日常へ」

昨今、宇宙ビジネスの広がりとともに、「衛星データの利活用」に少しずつ関心が集まるようになってきました。
しかし、データが充実していく一方で、それを社会で実用、活用しきれていないのが実情です。
今回のセミナーでご紹介した数々の「実証」を通じて、衛星データを現場で役立つサービスへと育てていく私たちの取り組みを、少しでも身近に感じていただけたなら幸いです。

“デジオンは、宇宙技術の「専門知」を、「誰でも・素早く・簡単に」判断できるアプリケーションの形に翻訳して届けることで、高度技術の社会実装を推進してまいります。”

現在「イナリス」は、各自治体様との実証を重ねながら、機能やUI/UXを磨き上げている段階です。
私たちが掲げるミッションは、現場のリアルな課題と向き合う皆様との「共創」があって初めて実現します。
飯塚市での成果を皮切りに、福岡県全域、さらには全国へと広がる実証を通じ、一日も早く「次世代行政DX」の頼れる選択肢として皆様にお届けできるよう、デジオンはこれからも挑戦を続けてまいります

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